マズローの欲求五段階説 は、衣・食・住の確保など「生理的欲求」を底辺に、2段目に病気や雇用などのリスクや危険から身を守る「安全の欲求」が積み重ねられます。さらに、集団に属し家族や仲間などの愛情で満たされたいという3段目、「所属と愛の欲求(親和欲求)」へ続きます。4段目に自尊心に目覚め周囲から尊敬されたい「承認の欲求」が、5段目は自己の存在意義を実現させる「自己実現の欲求」が頂点を飾ります。人間の本能的欲求をざっくり整理してピラミッドモデルにしたことで、現在もビジネスや人材教育などの分野において世界中で活用されています。 物質的文明で生じた、満たされない部分 さてここで、このピラミッドが、当研究所で実施するワークどのように関わるか紹介しましょう。 【生理的欲求】 生理的欲求は、食欲や睡眠欲など、人が生命活動を営むうえで必要不可欠です。最も本能的で、生理活動や遺伝子レベルにまで関係します。 科学技術が発達して物質的に恵まれた現代、下層の欲求は100%満たされているはずです。ところが現実は、科学技術が発達した文明社会であるがゆえに、基本的欲求が脅かされる事態が起きています。つまり、現代人の生命活動、健康、安全は、環境汚染や地域紛争、エネルギー問題などに脅かされています。とくに日本では、環境汚染による食・住・睡眠・妊娠・出産に与える影響が重大です。 【安全欲求】 生理的欲求がある程度満たされると、次に、雨風をしのぐ家や、心身の健康など安全・安心な生活を求める思いが頭をもたげるとされています。この欲求は、病気や事故に脅かされず、安全で快適な場所に住み、心身ともに安全(健康)でいたいという思いです。 ユーサイキアのワークは、身体と心の癒しのメソッドです。より良く大きく成長し、人生の成功を支える盤石な土台をつくります。生理的欲求と安全欲求において、本人が気づかないでいる満たされない部分を自覚に導き、自己発見を通じて自然なプロセスでその欠けを補います。この部分は、ピラミッド全体を支える土台部分であるだけに、堅実堅牢に築いておきたいものです。 つながりと共感。モチベーションの向上。創造性と実行力。 【愛と帰属の欲求】 太古の昔から人は群れを作り、集落を営みました。やがてコミュニティが大きくなり、長年の歴史のなかで国家という大きな社会単位を生み出してきました。 もともと人間は集団生活を営む生き物です。単独で生きるようにはできていません。孤独を感じ、誰かと一緒にいたいと仲間を求めます。恋人と出会って家族を作ります。他の人との情緒的な関わりや、自分が受け入れられどこかに所属しているという感覚は、心理的な足固めとなり、夢の実現への勇気と行動力の源になります。 ユーサイキアのブレスワーク、ボディワークは、人との絆と共感を実感し、社会に必要とされ、果たせる役割があることを再確認できるモチベーション向上に効果的なプログラムです。 【承認欲求(尊厳欲求】】 4番目は、他者から認められたい、尊敬されたいという「承認欲求(尊厳欲求)」です。属しているグループ(会社、学校、サークル)のなかで認められたい、尊敬されたいという思いは、人としてごく自然なこと。この欲求は、人を前進させ、成長していくモチベーションとなるのです。 安全で豊かな今の日本でモチベーションを上げるのは、お金など物質的なものより、精神的な充足感にあるでしょう。社会的に評価されたい、仲間の中で特別視されたい、認められたいという思いです。 ユーサイキア研究所のワークショップは、物質的所有欲を超えて、精神的な欲求に応える価値あるプログラムです。 【自己実現の欲求】 ピラミッドの最上位に位置づけられている自己実現の欲求。 自己実現とは、自分の目的、理想の実現に向けて、もてる才能、能力、可能性をかけて最大限に努力すること。自己の人格を発展させ、潜在している能力を発見あるいは発展させること。成熟した人間像を目指すことを意味します。 ユーサイキア・ブレスワークのピークエクスピリエンス(ゾーン、フローとも呼ばれる)体験で得られる成果は、まさにこの自己実現のカテゴリーに属するものが多く見られます。自己実現した人の特性である、新しいアイディアに開けて創造性に富み、健康に気を配り、自発的、謙虚、善悪を見分ける認識力、勇気と決断力など。こうした生活態度や才能、能力が自然によみがえってきます。アーティストが自己の才能を開花させたいと努力する姿勢や、社会的に成功した企業家が、さらに上をめざして自分の限界に挑戦しようと考える欲求もこれにあたるでしょう。 ユーサイキア研究所のワーク・メソッドは、こうした人間本来の欲求を支える行動力と気力、体力を養います。いつまでも活き活きと元気に健康を守り、豊かな生活をおくりたい方のための人生のセラピーです。 マズローは、より高いレベルの欲求へと向かうのに、各段階の欲求が完全に満たされてからというわけではないとしています。現代の豊かな社会では、最上位の欲求は、特別な境遇の人に生じる欲求ではなく、誰にでも生じてくるものになりました。実際、ワーク現場でも、階段を一段一段のぼるというより、各レベルの欲求を同時にすべて満たしていくケースが多々生じています。 次回は、マズローが晩年になって見出したピラミッドモデルを超える 6番目の欲求レベルについて紹介したいと思います。
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ヒューマンポテンシャル・ムーブメント(人間性回復運動)は、マズローの自己実現理論の影響を受けて、1960年代のアメリカ西海岸で盛んになりました。この時代、日本は経済成長の途上にあり、今のようなインターネットやSNSもなく、情報や人の行き来は制限されていました。そのため、政治・経済のような重要性が認められない海外事情は伝え聞く情報を推察と想像で補いながら貼り合わるしかありませんでした。
残念なことに日本では、ヒューマンポテンシャル・ムーブメント(人間性回復運動)が、同時代に起きたヒッピー・ムーヴメントやドラッグ・カルチャー、自己啓発セミナー、マルチ商法と混同されています。伝聞を切り貼りするしかなかった時代背景からすれば無理もないことです。しかしながら、人間性回復運動の真実の姿を識るためには、まずドラッグ・カルチャーや自己啓発セミナー、マルチ商法と全く無縁であることを語らなくてはなりません。 これらの社会現象が20世紀後半のアメリカ西海岸という同時代の同じ地域で近接遭遇していたことは事実です。しかし、筆者がしばしば長期滞在していたエサレン研究者をはじめとする人間性教育の研究施設で、自己啓発セミナーやマルチ商法に関わる人を見ることは一度としてありませんでした。人間性教育に関心を持つ人は自己啓発セミナーに関心がなく、その逆も然りです。両者は同じ時代に同じ地域にいながら、完全にすれ違っていました。 自己啓発セミナーやマルチ商法は、ビジネストークに、当時隆盛していたヒューマンポテンシャル・ムーブメントの文言を巧みに織り込みました。しかし、そのコンセプトに関心をもつことはありませんでした。売れれば理解する必要はありません。これは現代の広告代理店が、扱い商品の販売戦略に、流行語や流行しているコンセプトを使って消費者にピーアールすることと同様です。 また、マズローはヒッピーやドラッグ・カルチャーに批判的で、共感することはありませんでした。筆者はマズロー博士と親交があった人たちから、生前の博士の個人的エピソードを聞いていますが、そこから受けた印象では博士が当時のドラッグ・カルチャーと無縁であったことは明らかです。 人間性心理学は社会の混迷と混乱に秩序を与え、第二次世界大戦後の世界に平和と創造性をもたらす道標となった実践的学問です。人間と社会が秘める可能性への挑戦でもあります。自己啓発セミナーや、ドラッグ・カルチャー、ヒッピー・ムーブメントなどが目指す方向とは異なる生きかたを提案するものであるとご理解いただきたいと思います. |
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